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AVAN代表川奈まり子さんインタビューからみえてきたAV業界の現状と今後(前編)

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こんにちは、ふぇみブロガーのもにかです。

今回は、こちらの記事『AVAN代表 川奈まり子さんご回答全文』にて公開した真空パックAVなどについてのAVAN代表川奈まり子さんとのやり取りの中で見えてきたAV業界の現状と今後について前編と後編に分けてお送りします。

ご回答全文はこちら。

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ご自身もAV女優として多くの作品に出演されており、また現在は一般社団法人AVAN(Adult Video Actress&Actor’s Network)代表としてAV作品の表現者を、ひいてはAV業界全体を守り、そしてより良くしていくために日々、奮闘しておられる川奈さんに様々なお話をきくことができました。

前編では「AV業界の現状」についてお伝えしていきます。

どこからどこまでが"AV業界"?

私自身真空パックAVの件を目にしたときに「"AV業界"ってどうなってんの?」って思ったんですね。
それで、AV業界のことなのだからAV業界の中の団体であるAVANさんに聞けば真空パックAVのことも分かるだろうと思っていたんですね。

でも、そもそもAV業界と一口にいってもその輪郭はとても曖昧なものだったんですよね。AV業界には監督官庁がついていないし、行政によって業者の登録や認定もいらないんですよね。
つまり、やろうと思えばどこかから認定などを受けなくても誰でも今日からAV作品の制作ができるっていうことなんですよね。

だから、どこかのメーカーが違法なことをやったりしたとしてもそのことについてAV業界全体をさして「どうなってんの?」って言われても、きちんと法律守って真面目にAV作品をつくってきた人たちからしたら「と、言われましても。」って感じですよね、そりゃ。

適正AVという概念

このように今までは特に「AV業界」をまとめあげるような団体はない状態だったんですよね。

ですが、そんな中で2016年に「AV出演強要問題」がもちあがりました。大きく話題になってましたよね。
これを受け、AV出演者などAV作品の表現者の権利を守るため一般社団法人AVANが設立されました。
また、契約書などがプロダクションごとにばらばらだったり、そういう不十分な部分をきちんとしていこう、規律などを明確にさせようということで2017年4月に「AV業界改革推進有識者委員会」(※1)が立ちげられました。

そして、この委員会がまず提唱したのが「適正AV」という概念でした。

成人向け映像(アダルトビデオ)の総称としては「AV」が一般には認知されているが、 ここで敷衍する適正AVとは、IPPAに加盟しているメーカーが制作し、正規の審査団体 の厳格な審査を経て認証され製品化された映像のみをいう。無審査映像、海外から配信され る無修正映像、著作権侵害の海賊盤および児童ポルノは、適正AVの範疇には入らない。国 内の法規制に則り、確かな契約を取り交わして作られ、著作権の所在が明確であり、指定の 審査団体において審査され、業界のルールに従い且つゾーニングされて販売またはレンタ ルされ、映像の出演、制作および販売・レンタルの責任の所在が明確なものだけを合法な適 正AVと称する。なお、将来的には適正AV=AVとして社会認知されることを目指す。

(引用:業界刷新策の提言)

 

「適正AV」とは、「出演者の募集から商品発売に至るまで、適正化されたプロセスで作られたAV」のことで、委員会は「適正AV業界」が守るべき規則などを以下にまとめています。

http://www.ippa.jp/pdf/AVkaikaku-teigen20170406.pdf

適正AVの作品は日本では唯一のAVメーカー団体であるIPPA(※2)が認可した倫理審査団体によって刑法のわいせつ罪に相当しないか否か(性器のモザイク処理)だけではなく、「倫理面」の審査も行われているそうです。

ちなみに、この倫理審査の審査員はメーカー関係者が兼任することはできず、AVメーカーやプロダクションとは無関係の、一般採用で就いてる人のみだそうです。

そして、その倫理基準は年々厳しくなっているそうで、例えば「児童に見える・児童だという設定のポルノの禁止」や「社会問題の侮蔑的な扱い(出演強要問題や女性弁護士という肩書を利用した内容など)の禁止」「野外露出などについて、違法行為の成果物の禁止」が厳格になったそうです

 

※1:同委員会は、発足から半年経った2017年9月末で活動を終了。10月からは「AV人権倫理機構」として活動をしていく。

※2:IPPA=正式名称を「知的財産振興協会」。日本のAV業界では唯一のAVメーカー団体で、海賊版摘発(警察と連携)・業界振興計画(企画と実施 JAEなど)・加盟メーカーへの倫理審査義務付与などを行っている団体。

 

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適正AV以外は"ノー審査 "

これはとても驚いたのですが、適正AV以外については審査は行われていないんだとか。

もちろん、その中でも内部できちんとした倫理基準で制作しているところもあるのかもしれませんが、第三者の目を通してはいません。

これは私はとても危険なことではないかと感じます。
内部の人間の目だけでは、どんなに規定をきちんとしているつもりでもどんどん過激になっていってしまったり、一般の基準とずれていってしまったりすることもあるのではないでしょうか。

今回の真空パックAV作品などで有名なメーカーはこの適正AVに参加していないんですね。なので、AVANさんや適正AV業界の方々にはそのメーカーでどのような撮影のプロセスを踏んでいるかとかっていうのは全く分からないのです。

 

安全・安心な適正AVとそれ以外のAV

つまり、適正AVというのは第三者の目もはいった規律に基づいて制作されていることが保証されている安全・安心なAV作品。

それに対して適正AV以外のAVについてはそれが不明であるものと言っても過言ではないでしょう。
中には、適正AVに参加していなくても独自にきちんと規律をもってやっているところもあるのかもしれませんが、それを見分けることは一般の人間にはとてもじゃないけど不可能に近いことなのではないでしょうか。

また、この適正AVの概念ができるまでも(適正AVの概念ができたのは2017年4月)適正AVに参加しているAV業界のメインのプレーヤーの多くは、作品の審査も受けてきており、きちんと法律を守ってAV作品の制作を行ってきたようです。

 

 

しかし、解決していかなければいけない課題もまだまだあります。後編ではその課題とAV業界の今後について触れていきます。

 

後編はコチラ

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